「ライシテの変貌」『ソフィア』

 本日発行の季刊誌『ソフィア』(上智内外の広い読者を対象にした学術誌)に、「ライシテの変貌――左派の原理から右派の原理へ?」を寄稿しました。
 フランスのライシテが歴史のなかで左派のものから右派のものに変貌していく様子を示しつつも、近年の右傾化したライシテに、ライシテの理念がすべて還元されるわけではないことを論じています。
 脱稿は5月末で、オランド政権のライシテを歴史の流れのなかに位置づけながら、その行方を占おうとしていますが、その後の展開もなかなか興味深いです。
 8月末には国民教育大臣ヴァンサン・ペイヨンが、ライシテの道徳を新しく導入することを発表しました。
 昨日(12月9日)にはオランド大統領が、学校での道徳教育についての提案をまとめあげる機関として、来年にも「国立ライシテ監視機関」(Observatoire national de la laïcité)を設立することを発表しました。
 12月9日というのは、ライシテの基本法である1905年が制定された日に当たります。107年目の今年は、宗教社会学者でライシテの著作もあるエミール・プーラに、レジョン・ドヌールが贈られたようです。たしか1924年生まれだったはずです。数年前、プーラ氏の自宅を訪ねたことがありますが、80代半ばで非常に矍鑠としておられ、早口で固有名詞がポンポン飛び出してきて、博覧強記というのはこういうのだろうと圧倒されたことを覚えています。

たまには更新をしないと

 開店休業状態のブログだが、ときどきは更新しなければならないと思わされたことが最近あった。それは、大学受験を控えた高校生がこのページにたどり着くこともある、ということを知ったこと。
 とりあえず今は、日々の授業の準備と、今週末にある宗教史研究会と科研の合同研究会の発表のことが気がかり。フランスの宗教学・宗教研究の特色を、制度的な観点に注目しながら論じるというのがお題で、正面から網羅的にやろうと思ったら、膨大すぎてとても一人ではやれないテーマだが、時間が近づいてくるにつれて、どうせやれることしかやれないと開き直って準備をはじめたら楽しい。フランスの文脈におけるある種のメインラインが日本に入ってきていないことが見えてきて、その理由を考えることは、自己理解にもつながっている。
 そのうちのポイントのひとつは、ずばりガブリエル・ルブラで、私は学部生のときにデュルケムの宗教社会学をツマラナイ統計社会学の方向に後退させた人という位置づけで習ったが、理論的・内容的にはともかく、制度に注目するなら、この人に言及せずに、20世紀後半以降のフランスの宗教学・宗教研究(とりわけ宗教社会学系)を語ることは難しいのではないかとさえ、ある意味では言いうる。
 その準備を進めつつ、今年度で退官する恩師について書く原稿のほうが実は締め切りが1日分早いのだ。いいものを書きたいが、気持ちが入りすぎて肩がこってもよくないと思う。感情的、スケジュール的には一気呵成に書きあげたい部分もあるが、まあ今日あたりからちょこちょこ書いていこう。

4回目の記念日

半年以上もブログを更新せずに放置してしまいました。
最後のエントリーからちょうど今日で9か月。
でも今日は記念日なので、ちょっとだけ書きます。
何の記念日かというと、香凜の移植手術の記念日です。
今月の10日に無事に4歳を迎えました。
体力なかったり、風邪をひきやすかったり、ときどき幼稚園に行くのを嫌がったりしますが、元気です。
先日の幼稚園の運動会では、4人でかけっこして、なんと一番でした(これには相当驚きました)。
私はと言うと、なんだか最近あまりお酒が飲めなくなりました。
痛飲したら、3日間くらい経たないと回復しない。
少しでも飲むと、次の日は半日くらい使い物にならない。
1年ほど前まではちょっよありえなかったことです。
でも、今こうしていられることに感謝しつつ。

日仏会館人文社会科学系若手セミナー

 来る2月18日(土)、日仏会館で、人文社会科学系若手セミナーが開かれます。冬の若手セミナーは、その年度の渋沢・クローデル賞受賞者の発表になっていて、重田さんとご一緒させていただきます。私のほうは発表時間の6〜7割は本の内容をなぞるような話になりそうです。

詳細はこちら。
http://www.mfjtokyo.or.jp/ja/events/details/167.html

人文社会科学系若手研究者セミナー
日時:2012年02月18日(土曜) 14:00 - 18:00
会場:日仏会館6階601号室、参加費無料
講師
重田園江(明治大学准教授)「モース/ナシオン/ナシオナリザシオン」
伊達聖伸(上智大学准教授)「基点としての『ライシテ、道徳、宗教学』」

日仏会館若手研究者セ​ミナー(フ​ーコーと歴史)

明後日の日曜日、11月20日14時より、日仏会館にて、人文社会科学系若手研究者セミナーが開催されます。このセミナーは、若い気鋭の専門家が、一般の人にもわかる言葉で研究内容を披露し議論する、というのが特徴です。今回のテーマは、「ミシェル・フーコーと歴史」です。

詳細は以下のページをご覧ください。
http://www.mfjtokyo.or.jp/ja/events/details/144.html

日時: 2011年11月20日(日曜) 14:00
会場: 日仏会館6階601号室
司会: 廣田功帝京大学
発表者:坂本尚志(ボルドー第3大学、京都大学)「ミシェル・フーコーにおける哲学と歴史」
    重田園江(明治大学) 「ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む」

坂本さんは、今年の3月、フーコーについての浩瀚な博士論文"Le problème de l'histoire chez Michel Foucault" で学位を取得されました。
重田さんは、『連帯の哲学I』(勁草書房)で今年度の渋沢・クローデル賞本賞を受賞され、9月に『ミシェル・フーコー』(ちくま新書)を出されています。

連帯の哲学 1 フランス社会連帯主義

連帯の哲学 1 フランス社会連帯主義

ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)

ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)

現代フランスの宗教状況とカトリックの社会的射程

 ご縁あって、タイトルの記事を「中外日報」に書かせていただきました。ネットでも記事が読めるようです。紙媒体の新聞だと、ちょうど前半と後半がうまく切れたレイアウトになっています。
 フランスにおいて、社会的な射程を持った宗教の活動、これまでは歴史的なライシテ研究ということで、正直まだあまりよくわかっていない部分が少なくありません。それでも、機会があれば少しずつでも勉強していきたいと思っているところ。

鉄道画家 松本忠の個展

 応援部時代の先輩や後輩そして同期には、しばしば風変わりな人物がいたものだが、同期で東北大の団長をやっていた松本忠は、今は鉄道画家として活躍している。そんな彼から、個展の案内ハガキが届く。3月までいた仙台の住所に送られていたものだったが、2回の転送を経て、運よく手にすることができた。
 ハガキに描かれているのは、「陽だまりの始発線」と題された震災前の石巻線女川駅。彼のもともとの画風からして、「追憶」とか「郷愁」といった言葉を連想させるのだが、今となってはなおさらそのような思いを禁じえない。

 松本忠 個展 「一歩ずつ、線路の果てに見る夢」
 2011年11月1日〜6日
 LBギャラリー(仙台市青葉区大町1−2−1ライオンビル1F)

 仙台での学生時代に鉄道の魅力を知り、会社退職後に移住した福島県郡山市で、絵描きとしてスタートを切りました。これまで東北地方のほぼ全ての路線に乗車し、沿線の様々な風景を描いてきましたが、今年の3月11日以降、それらの路線の多くは、変わり果てた姿となってしまいました。
 鉄道を描くことを生業とする者として、これまでの感謝の思いと復興への祈りを込め、当展を開催し、売上の10%を東日本大震災復興義援金として、宮城県災害対策本部に寄付させて頂きます。
                       鉄道風景画家 松本忠

公式HP「もうひとつの時刻表」はこちら