ライシテ関連新刊――ルネ・レモン『政教分離を問いなおす』

 ルネ・レモン『政教分離を問いなおす』が青土社より刊行されました。工藤庸子先生の肝いりの本ですが、私もお手伝いをさせていただきました。

政教分離を問いなおす EUとムスリムのはざまで

政教分離を問いなおす EUとムスリムのはざまで

 表紙の名前の並びを見ると、共訳のように見えるかもしれませんが、本体部分を訳されたのは工藤先生お一人です。私が訳したのは、レモンが編んだ参考資料の箇所です。それから、用語解説を執筆させていただきました。工藤先生は、まえがきと長文の訳者解説をお書きになっています。
 今回お仕事をご一緒させていただくことができたのは、非常に名誉なことでした。うちの妻も「え、あの工藤先生と」と興奮気味でした。
 「姦通小説」がご専門の先生によると、ライシテ研究は「色気がない」そうで、私のように「専門はライシテです」と言っていきたい人間からすると、「男としてまだまだね」と言われているように感じて情けなくなってしまいます(というのは半分くらいは嘘かもしれません)。せめて「中立性を原理とするのがライシテですから」くらいの言葉で切り返したいのですが、きちっとしながらも「しなやか」な先生のお仕事振りとご対応は、私からすると「女性的」という言葉で形容するのがやはりしっくりきてしまい、逆に自分の男性性がしばしばあぶり出されてしまったように感じています。
 それはさておき、本書の中核をなしているのは、アカデミシャンでフランス歴史学の泰斗ルネ・レモンの知性あふれるエッセイです。工藤先生は、共感とともにテキストに寄り添って訳され、さらに、フランスのライシテを世界のさまざまな政教分離のなかに位置づけようとしています。私は、できるかぎりわかりやすく、フランスのライシテを補足説明したつもりです。本書によって、少しでも「ライシテ」の敷居が日本の読書界にとって低くなればと願っています。お手に取っていただけると幸いです。