新しいおうち

さて先週末に引越しをして、トゥールコワンからリールの街中のアパルトマンへと移ってきた。荷物は思ったよりも多く、運び込むのはそれなりに骨の折れる作業だったが(ほとんど積み下ろしをしてくれたダンナ様とピエール・アンリに感謝です;;)、いざ片付けてみると、今度の新居には収納場所が多く、本棚一つ以外の家具を持たない私たちにとっては、随分と広い空間が残されることになった。
どのような作りかというと、玄関のドアを開けると天井の高い縦長のリビングで、部屋の奥には通りに面して高さ3mほどの出窓がある。お部屋は3階にあるので、日中は窓から光が差し込んで気持ちがいい。左側の壁は一面プラカードといって収納棚が二つ作りつけてあり、観音開きの木製の扉が右端と左端、二組付いていて、開くと2mほどの高さで中が収納棚になっている。壁の色、プラカードのドアの色は全て白だ。ぐるっと左を向くと、窓と対面する形でキッチンが備え付けてあり、前の住人が置いていった台所用の小さな机と、折りたたみ式で、ちょっとがたがたする木の椅子が2つある(今のところ私たちはこの机と椅子でご飯を食べている)。キッチンにはこれまた最初から残されていた木製のオープンラックを2つ置いて、食器などを片付けている最中だ。キッチンの裏には奥の部屋があって、この部屋の奥にもリビングと同じ出窓があり、建物の裏側に面している。つまり縦長の間取りの両サイドに大きな窓があるので、とても明るくて風通しがいいのだ。この部屋に入ってすぐの左のドアを開けると洗面所があって、残念ながらバスタブはないのだが、洗面台とトイレ、シャワー室がひとつの部屋にまとまっている。洗面所の真上はメザニンといって中二階というかロフトというか、2段ベッドの2階のような小さな物置部屋だ。私たちは最初の物件見学でこのメザニン付きの部屋を見た瞬間、ここは勉強するにはばっちりだ!と思い、ほとんど即決でこの部屋を借りることにしたのだが、さていざ住み始めてみると、さすがはフランスで、それなりに色んな事が生じる。プラカードのドアが閉まらない、キッチンの明かりが付いていないのは前の住人も話していたし了解済みだったとして、いざ勉強部屋を作るとなってみて、部屋があまりに傾いているのにはちょっと驚いた。窓と平行に机を置けば、机も椅子も横に傾いて落ち着かないし、垂直に置けば今度はゆるい坂道で坂の上に向かって座っているような感覚だ。もちろん机の脚の長さを変えるなどすれば調節はきくのだが、さすがに椅子まではどうしようもない。どうやらこのアパルトマン、改装済みとは言っても元は相当に古そうだぞ・・・なんて言いつついろんなところを二人で探検してはいじっているのだが、いくつか感心する面もある。例えば、ここのメザニンや洗面所はいかにも大工さんがとんてんかんてん工事して木を打ち付けて作りました、といった感じなのだが、サイズを測ってみると、案外どこもきっちりとした数字になっていて、新しく物を増やしたりする場合にはわかりやすいし規格が丁度ぴったりだったりするのだ。ドア幅は1m丁度、木のラックは横幅70cm、奥行き30cm、メザニンの手すりは130×高さ30、とどこもそんな感じなので、例えばおなべを買ってきても電気ヒーターの底とおなべの底がぴったりで棚にも丁度収まる、とか、カーテンを付けるとなったら窓枠にも棚にもぴったりのものが布地でも既製品でも売っているとか、そういう意外な便利さというのはある。私たちは何とかメザニンで眠れるようにしたかったので、メザニンのサイズを測ったところ、これまたセミダブルベッドの大きさぴったりの広さにできている。フランス人と日本人の「きちんと」感覚は天と地ほどの違いがあると思うが、この「きちんと」は好ましいなと思った。
引っ越してからまだ一週間経たないうちに、メザニンを整え、置いてあったマットレスを折りたたんでソファーに見立て、敷物を広げ、それなりのリビングを設えて、おそらくどこのおうちもするように、室内改造に夢中になっている私たちなのでした。(ふ)