一時帰国に際して和書を仕入れる

 一週間の日本滞在を終えてリールに戻ってきた。国際研究会議のお手伝いに多くの時間を割くことになり、日本で読もうと思って持ち込んだフランス語の本は(予想通りとはいえ)一行も読めなかった。滞在中に一度は更新しようと考えていたブログにも、手をつけることができなかった。そのようなわけで傍目には何かと慌しい感じのする滞在だったが、私としてはかなり漫然と過ごしてしまった一週間ではあった。それでも、いくつかの収穫があり、気分転換にもなり、もちろん有意義な滞在ではあったのだが。なんとなくの雑感はいろいろとあるのだけれど、具体化して発展できるような代物ではないので、また時差ぼけの疲れも残っているので、今回日本で仕入れてきた本をさらっと紹介するだけにしたい。
現代フランス事情関連
軍司泰史『シラクのフランス』岩波新書
竹下節子アメリカに「NO」と言える国』文春新書
現代思想フランス暴動――階級社会の行方』2006年2月臨時増刊
私のフランス滞在もそろそろ4年になるとはいえ、一般的なことでぜんぜんわかっていないことはまだまだたくさんある。それを日本語でインプットするという面でも勉強になるし、フランスの事情を日本語で語ることの距離感をはかっていくという面でもためになると思う。
イスラーム関連
井筒俊彦イスラーム文化――その根柢にあるもの』岩波文庫
W・C・スミス『現代イスラムの歴史』中村廣治郎訳(上下)中公文庫
池内恵『現代アラブの社会思想――終末論とイスラーム主義』講談社現代新書
これらはもちろん「現代フランス事情」と間接的につながってくる。基本書ばかりだけれども、ちゃんと読み(直し)たい。
辻邦生関係
辻邦生『城・ある告別』講談社文芸文庫
辻邦生『花のレクイエム』(銅版画・山本容子新潮文庫
辻邦生『微光の道』新潮社
辻邦生『海峡の霧』新潮社
辻佐保子『辻邦生のために』新潮社
今回参加させていただいた死生学の国際研究会議だが、次回は9月10月に日本チームがチュービンゲンとトゥールーズに遠征をする予定になっている。トゥールーズでお手伝いと思っていたのだが、そのとき死生学にかかわることで何か発表しないかと日本の指導教官から言っていただいた。フランスのライシテという私のメイン・テーマと死生学にかかわる日本の事情というのはなかなかつなげにくいので、おそるおそる、辻邦生の文学における生と死の問題というのはどうでしょう・・・と言ったらいいじゃないですかやってみなさいという感じだったので、新しく買い込んできた。メイン・テーマの研究の合間に、私が敬愛してやまない辻邦生の文章に接することができるのはとても嬉しいことだ。
翻訳・日本語関連
ユリイカ『翻訳作法』2005年1月号
大野晋『日本語練習帳』岩波新書
まだはっきりしたことは言えないのだが、翻訳の仕事をhf氏との共訳で1件進めている。それの参考にと。あと日本語練習帳の方は、日本語を教える際にも役に立ちそうだったので。
研究関連・その他
阿部美哉『政教分離――日本とアメリカにみる宗教の政治性』サイマル出版会
ジャンケレヴィッチ『アンリ・ベルクソン』(阿部・桑田訳)新評論
阿部先生の本は日本とアメリカの話だが、フランスという軸を入れたらどうなるか、じっくり考えてみたい。ジャンケレヴィッチの本はQuadrigeで持っているのだが、なかなか読み進められずにいたので、翻訳を活用したい。
雑・その他
中丸明『支倉常長異聞』宝島社
増田悦佐『日本型ヒーローが世界を救う!』宝島社
 「しょっち」こと(ふ)のお父様が持たせてくださった。政宗とその周辺の知識は身についていないとと思っているので、勉強していきたい(ちなみにNHK大河ドラマの『独眼竜政宗』の総集編のビデオを今回持ってきた。梵天丸の子役はなかなか味があって面白い)。増田氏の本は日本の漫画・アニメ論。日本の漫画・アニメはフランスでも人気があるので、その理由を対フランス人の日本語の授業で還元してみたらどうかと思った。早速今日やってみたら、想像以上に受けがよかった。
 その他持ってきたのは、漱石ドストエフスキーなど。動物占いの5アニマルズの本も(笑)。(ふ)は「表面キャラ」=ライオン、「希望キャラ」=ゾウ、になぜかがっかり。(き)=(きたろう?)は「隠れキャラ」が黒ヒョウだと思っていたのだけれど、今回見てみたらオオカミだった。

 当ブログと関係のある筋で、今回の一時帰国中(も)特にお世話になったのは、家内の実家に当たる「しょっちゅう玉玉」家(ちなみに「しょっち」氏と「kachobaka2の日記」の作者は同一人物)。また、隣に住むおばあちゃんのところにもご挨拶に伺うことができました(「若き日の思い出」の作者)。それから、帰国前日には、私の主治医( ?)に当たる「おひるね堂」さんを「しょっち」氏「玉」氏とともに訪ねました。お世話様でした。(き)