博士論文提出

テーズ2巻本

 ヴァカンス前に何とかと思っていた念願のPh.D論文を今日学校に提出してきた。印刷所は思っていたよりも立派な外観で仕上げてくれて、今は中身を読み返すよりも外から眺めている方が楽しい。ディシプリンが「歴史」ということもあるが、2巻で641頁となかなか重厚なもので、この分量の論文を人が書いたと聞いたら即座に「おお、すごい」と感心すること請け合いだが、いざ自分のがこう出来上がってみると不思議と分厚い気はしない。
 これまで人が博論を提出したという話を聞くと、その達成感たるやさぞ、と想像してきたのだが、いざ自分がその身になってみると案外そうでもない。とりあえず最後まで書いた3ヶ月前や、実際に提出可能な代物かどうか指導教授に見ていただいていたこの1ヶ月、印刷所に入れるために自分の手を離れた1週間前と、こまめな達成感を味わってきたからかもしれない。あるいは、英語のレジュメをつけたり、審査員の先生方に発送したりという作業がまだ残っているからかもしれない。それより何より、秋の口頭審査を経ない限り、本当には終わっていないからだろう。6人の審査員に都合のいい日を見つけるのはなかなかややこしく、日程はまだ決まっていないが、メンバーはいずれも屈強で、一外国人のテーズにこれだけの人選をしてくださるのかと思うと、ありがたいやら、恐ろしいやら。
 いずれにしろ、現段階では実感らしいものはほとんどないのだが、このような節目にまで漕ぎ着けることができたのも、何かにつけ気配りしてくださった先生方、似たような境遇で頑張っている同年代の友人、いろいろとわがままを許してくれた家族など、さまざまな方面からの力を得てのことであったので、深く感謝申し上げたい。
 完全帰国は8月8日。残りの日々は、事後処理と引越し準備、秋の学会準備に当てたい。それから旅行。フランス滞在中は禁欲的に研究に打ち込んだ上、懐が寒いことが少なくなく、最初の1年を除いては旅行らしい旅行をあまりしてこなかったので、少し重荷のとれたこの状態で感覚をいっぱいに開いてみたい。(き)