滞仏中

日本館より

 5月8日から2週間の滞在予定でフランスに来ています。
 日本のGW明けにいざ出陣とばかりに出発したものの、フランスの暦では5月にたくさん休みがあるということが頭から抜け落ちていました。木曜日と月曜日が休み、ついでに金曜日も休むところがあったりして、いきなり5連休状態。
 それから何といっても暑い。4月は寒かったらしいのですが(ブローニュ=シュル=メールでは、4月15日に40センチも雪が積もったそうだ)、5月に入って急に暑くなったらしく、冬から一気に春を飛び越えて夏のような気候です。こちらへ来てから一度プールに行きましたが、列を作って並んでいる。入ってみたら、そこまで混んでなくて、いい気分でした。
 細かい日程はフランスに着くまで決まらなかったのだけれど、着いた翌日からリールに行くことにしました。幸い大学の図書館は金曜日と土曜日の午前中開いていたので、資料収集。パリの方が品揃えは豊富だけれども、地方の方が遠慮なくコピーできたりする。すぐに書く予定はないのですが、1年後とか2年後に1本の論文にまとまればいいなというつもりで、植民地における学校教育と、パンテオンの歴史に興味を持っているので、ぽつりぽつりと文献・史料を集めはじめています。
 リールにいるとき、今年2月公開のBienvenue chez les Ch’tisがノール地方だけでなく、フランス全国で史上最高の観客動員数を達成しているとかいう話を聞いて、観に行きました。南仏からノール=パ・ド・カレ地方のみすぼらしい町の郵便局に転勤になった中年男と現地の郵便局員、南仏に残してきた家族とのあいだのドタバタ喜劇。実際に住んでみたらよかったという話だけれども、偏見をうまく笑いに変える料理の仕方はなかなか見事なもの。笑いどころすべてで笑えたわけではないけれど(センスの問題というよりは言葉の力の問題)、分かったものはうんうんと膝を叩いて見ておりました。字幕作成者泣かせの映画だと思いますが、ノール=パ・ド・カレの感じが分かる向きには、必見ではないでしょうか。
 ノールの人はsの音がchになって、chの音がkになる傾向があります。この伝でいくと、サルトルがシャルトルになり、シャルトルがカルトルになります。映画だと、 現地に着いたばかりの主人公が、相手が« sien »というのを« chien »と聞いて、なかなか話が成り立たない。「サヴァ?」が「シャヴァ?」ですからね。まあ、あんまりきれいな言葉ではありません。
 私も昔(今でもかもしれない)« science » を「siアンス」ではなく「chiアンス」と発音して、「もう1回言ってみて」「もう1回」とからかわれたことがあります。いやあ、屈辱的でしたね、あれは(笑)。« catéchisme » を日本語のカナに移すときは「カテキスム」で問題ないと思いますが、こう発音すると「カテシスム!」と直されます(あれ、逆だったかな、ハハ)。
 閑話休題。今日からパリです。滞在を楽しみながら、仕事もゆるゆると進めていきます。コント賞の授賞式のときのプレゼンは、Auguste Comte au carrefour d’une double laïcisation de la morale et des études religieuses というタイトルにしようと思っています。写真は日本館から。真ん中あたりに見える丸屋根がパンテオン、遠くに見えるのがサクレ=クール。