大事な時

 私が東京で過ごしていた週末のあいだ、香凜の体には異変が起きていました。それをリアルタイムで知ったわけではありません。週末は、採血はしても、フェリチンの値は週明けにならないとわからないという仕組みになっているからです。月曜日になって、土曜日分とその日の朝の分の値が判明しました。恐れていた4ケタへの突入です。土曜日が1000台、月曜日が1200台でした。また、レントゲンを撮ったところ、肝臓が腫れているようです。
 妻は月曜から火曜にかけて、長女の歯科検診のため、仙台に戻ることが決まっていたのですが、香凜を一晩でも放っておくのがしのびないということで、もともと12月2日に自治医大に戻ろうと考えていた私は、予定を1日早めて、ボベロ氏の講演会が終わってからその日のうちに戻って香凜の様子を見ることにしました。
 病棟に上がったのは23時近くでした。香凜はご機嫌斜めだったらしく、声をあげて泣いておりました。私が行くと、ちゃんと父親と認識したようで、ぐずりながらですが、落ち着いてきました。そうやって30分くらい一緒に過ごし、励ましてきました。
 翌日(今日)、フェリチンの値はやはり1200台で、先生方は2回目のレミケードの投与を決めました。レントゲンで肝臓が腫れているとのことでしたが、今日腹部を見ると、膨らんでいるのが目で見てはっきりわかりました。先生のひとりは「これまで僕たちは、フェリチンの値が1000を超えて助けられた子どもはいない」と言います。それでも、今はマクロファージや血球貪食の段階に達しているわけではなく、まだ攻めの一手を打つことのできる段階です。3ケタに戻って落ち着くことも十分に考えられます。何とか香凜には「奇跡の子」になってほしい。
 手術から4週間を過ごしたマクドナルドハウスは、規定のため、一旦出なければならず、11月29日からは職員宿舎の移植者住宅に移っています。仙台に一泊した妻が今日、長女を連れて戻ってきました。香凜はどうも長引きそうなので、ここからまた新しい生活のはじまりです。私の仕事の環境はなかなか整いませんが、それでも最低限のことはやっていかないと。移植者住宅ではランケーブルもなく、ダイヤルアップしかないかと思っていましたが、ネットには自治医大の図書館からアクセスすることができそうです。