バタバタしています

 年度末は忙しいのが普通なのでしょうが、今まで個人的にはそこまで忙しい年度末を迎えたことがありませんでした。しかし、今年ばかりは非常にバタバタしています。人事の話は水面下で何となく動いていたのですが、最終的には3月半ばの(!)人事委員会で決まりました。
 これで任期制とはいえひとまず就職という運びになり、まわりはおめでとうと言ってくれるし、今の家庭の状況では少しでも安定するのが助かるので、本当にありがたいと思っていますが、感慨に浸る間もなく、引っ越し。1日で家族4人分の荷物を作りました。これは自分で言うのもなんですが、かなりの技でした。小さな子どもが2人いて、妻は荷づくりのほうではまったく活躍できなかったからです。
 家も場所もかなり気に入っているのですが、引っ越してきても、なかなか落ち着きません。実は自宅にはまだ机も本棚もなく、丸10日のあいだ段ボール40箱の仕事道具をほとんど開封することなく、インフラ整備と家事と育児に励んでいました。この週末でようやく明け渡してもらった研究室にその段ボールを運び込み、今日の壁の塗り直しの作業を待って、少しずつ箱を開けはじめたところです。
 年度末に作成しなければならない書類もあり、新年度の授業の準備もきちんと詰めなければならず、そういうときに突如としてパソコンが立ち上がらなくなってしまいました(これは2年前に1回あったのとまったく同じシステム・エラー)。幸い重要なデータはだいたいメモリースティックに取ってあったので、心機一転とばかり、これは完全にrestaurationすることにしました。
 そういうわけで、新しい気持ちで今年度の業績をまとめる書類を作っています。論文はDEF/FLEのメモワールをカウントして4つなので、自分でもやや少ないと忸怩たる思いです。しかも「宗教的事実の教育」についての論文は、日の目を見たのは今年度ながら、昨年度にできていた内容ですし。
・「現代フランス中等教育における「宗教的事実の教育」について――「歴史」教科書と「市民教育」教科書の分析を通して」『世界の宗教教科書』大正大学出版会、2008年(電子書籍
・「死者をいかに生かし続けるか――オーギュスト・コントにおける死者崇拝の構造」『死生学研究』第10号、2008年
・「コントとルナン――実証主義的宗教史の今日的可能性と不可能性」、市川裕・松村一男・渡辺和子編『宗教史とは何か【上巻】』リトン社、2008年
・L’universalisme et l’ethnocentrisme, Mémoire pour le DEF / FLE, L’institut franco-japonais de Tokyo et l’Université du Maine, 2008.
 まあ言い訳をさせてもらえば、6月締め切りだった仏語論文がいつかは形になるはずだし(よくある話しながら、先日編者の先生に進行状況を確認したら、締め切りを守ったのはほとんど私ひとりだったらしく、ほかの執筆者からの原稿はまったく集まっておらず、出版がいつになるかはまったくわからないそうだ)、フランスにおける宗教学の制度化について書いたものが来年度の半ばには出るはず。個人的に痛かったのは、2月締め切りで3月発表と言われていたケベックのライシテについての論文が、編者の思い違いがあって、完全に流れてしまったこと。まあこういうことも、ときにある話なのでしょう。
 学会・研究会の発表数は8つあるので、まずまずか。
・2008年4月19日「デュルケムと市民宗教――ルソーとベラーのあいだ」第16回デュルケームデュルケーム学派研究会、和歌山大学
・2008年5月1日「フランスにおける教育と宗教――歴史教育と市民教育」世界の宗教教育研究会、大正大学
・le 17 mai 2008. « Auguste Comte au carrefour d’une double laïcisation de la morale et des études religieuses », Conférence associée à la remise du prix de la thèse, Maison d’Auguste Comte, Paris.
・2008年5月30日「オーギュスト・コントの死者崇拝−−生者と死者の関係」第81回東北大学宗教学研究会、東北大学
・2008年6月7日「コントの宗教史とルナンの宗教史――19世紀半ばにおける宗教史叙述の転換」宗教史学研究所第47回研究会、東洋英和女学院大学
・2008年9月14日「ライシテの歴史と社会学――学問と政治的発言のあいだ」第67回日本宗教学会筑波大学
・2008年11月17日「ジャン・ボベロの業績とライシテ研究のスタンス」UTCP「世俗化・国家・宗教」研究会、東京大学
・2009年2月3日「サルコジと市民宗教」「政治と宗教のインターフェイス」研究会、南山大学
 翻訳が――数え方がちょっとずるいかもしれないけど――以下の5点。その他、共訳で進行中のものが2点(いずれも来年度には出るといいのですが)。
・グレニス・ハワース「英国における死生学の展開――回顧と現状」(伊達史恵との共訳)、島薗進・竹内整一編『死生学1――死生学とは何か』東京大学出版会、2008年
・ジャン・ボベロ「世俗化と脱宗教化」羽田正編『世俗化とライシテ』UTCPブックレット、2009年
・ジャン・ボベロ「フランスにおけるライシテ――歴史と今日の課題」羽田正編『世俗化とライシテ』UTCPブックレット、2009年
・「21世紀世界ライシテ宣言」羽田正編『世俗化とライシテ』UTCPブックレット6、2009年
Susumu Shimazono, « La laïcisation et la notion de religion au Japon », in Masashi Haneda éd., Sécularisations et laïcités, UTCP Booklet 7, 2009.
 いちおう「研究に専念」できる環境を、というお膳立てをしてもらった制度においてこの業績数では、最低限の務めは果たしたつもりではいますが、到底自分で納得できるレベルではありません。テーズを日本語化する作業がそれなりに進んだのと、今年度の後半は家族のことでいろいろあったのとで、さしあたり自分を慰めています。
 来年度は、教育と事務も入ってくるので、特に教育のほうは楽しみですが、何せ初めてのことが多いので、研究はどうしてもスローペースになるはず。そこをできるかぎり踏みとどまって形にしていきたいと思っています。