年内授業終了、ケベック行き準備へ

 年内の授業もこれで終わり。いろいろあった1年だったなあと振り返る余裕はまだないけれど、いちおう一段落。先週は後半も忙しく、折からの気候の変化で、ちょっと腰にきかけている。大事にしながら、年末年始の仕事に切り替えていきたい。
 新年早々、ケベックに行くことになっているのだ。文化庁がやっている海外の宗教事情調査の枠で行くのだが、向こうでお世話になるミシュリーヌ・ミロ氏が、倫理・宗教文化教育(ERC/ECRと略すらしい)を制度化した省庁の方々も紹介してくれる予定になっていて、ほかにも、日本の教育における宗教(的なもの)の位置について、フランス語で発表することになっている。
 何もこんな寒い時期に来なくても、と口をそろえて言われている。今年は今のところ、暖冬傾向らしいのだが、冬になると零下30度まで気温が下がるようなところなのだ。経験者は、親切にも(あるいは面白がって?)どれだけ寒いかをお聞かせ下さるのだが、加納由起子さんの次の活写は、一度も現地を訪れたことのない者にも、ケベックの冬がどの程度のものかを教えてくれる。

 ケベックの冬は、耐寒の装備を一つ一つ身につけ、一つ一つ外していく儀式である。外に出るとなると以下の動作を繰り返さなければならない。セーターを重ね、靴下を重ね、ズボンを重ね、鋲付きのブーツを履いて、マフラーやショールで幾重にも襟元をくるんだ後、コートを着込み、毛糸の帽子の縁を目深に降ろし、携帯や鍵の在処を確かめ、最後に手袋をし、まるまると着膨れてから初めてドアを開ける。ほとんどが水力発電で世界でも最も料金が安いといわれるケベックの電気暖房は、室内をほとんど摂氏30度にまで暖める。一方、戸外の最低気温は都市部ですら氷点下30度に達する。中と外との温度差は約60度、空気の乾燥も普通ではない。外から入ってきたら、靴の裏についた雪が融けて家中がドロだらけになるのを避けるために、まず靴を取り替えなければならない。引き続き、外に出るときに行った同じ手続きを、今度は逆に行う。これらは全部で5分から7分、場合によっては10分もかかる面倒な作業である。しかも1日数回繰り返すのである。

ケベックを知るための54章 エリア・スタディーズ

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